当初の構想では、内部空間はシンメトリー(左右対称)に近い構成だったように思われる。しかし、実際の工事にあたって凝灰岩の粗密の斑が、ノミという工具の前に大きく
立ちはだかり、また湧水などもあって今日みられるような不整形なものにならざるを得なかったのだろう。
内部に足を踏み入れるとヒヤリとした空気が身体を包む。年間を通して18〜19℃という室温が気持ちよいが湿度も高い。
最初に工事の行われた中央大広間は入念に仕上げられている。完全に軸対称の空間がつくられデザインの質も高い。「巌窟ホテル高荘館」の中心を構成する空間として密度の高い
工事が行われている。部屋の奥行きは5間(約9m)、幅は部屋の中央で2間(約3.6m)、
中央大広間というには小規模であるが、実際のスケール以上の大きさを感じさせる空間でもある。天井はゆるやかに湾曲していて、装飾にも密度がある。スケールは厳密で測量の結果から推測すると、一般的な日本建築のように1尺(約30B)をモデュール(基準寸法)として各部の寸法を割り出していったようだ。
玄関正面の中央階段は、上がって行くと闇の中で岩壁に突き当たる未完のものだが、その闇の中からタキシード姿の峯吉が姿を現し一歩一歩ゆっくりと階段を下りてくるような気配がここにはある。