中央大広間の中程の通路を左に折れると化学(科学)実験室である。デザインの密度は遙かに中央大広間に及ばないものの、実験台や研究台、電話室や棚、そして花瓶までもが彫り抜かれ、刻み込まれている異様な空間である。中央大広間と異なり、化学(科学)実験室という具体的な部屋の機能が明示されていながら、全く静止した空間として提示されている。
表情だけ見ると、キューブリックの「2001年宇宙の旅」で、旅の果てにボーマン船長が目にした室内の風景とはかけ離れている。しかし部屋の中のあらゆるものが単なる記号として、表面だけが存在しているという点においては同質の空間なのだ。