ここから中央階段の後ろを通り、2階へ結ぶ階段のところまでの通路にはいかなる意匠も
施されていない。ニッチ(壁龕)風のものが幾つか岩壁に穿たれているだけだ。
この通路は人が這って通れるだけの寸法だったものを、2代目の泰治さんが掘り広げたということであり、2階への階段、2階の通路も同様な経過をたどっている。
階段を上がり、通路からバルコニーに出ると外の光が眩しい。市野川を越えて遠望できる風景は、ここに来る道すがら見たものと同じはずなのだが、バルコニーの低い天井と側壁
によって切り取られた風景は全く別種である。視点の高さに加え「巌窟ホテル高荘館」というフィルターを通すことで可能になる風景がそこにあった。