初めてこの建物に出会ったのは1985年の春だった。千葉県安房郡三芳村に不思議な建物があるという話だけを頼りに探しに出かけた。館山から三芳村に入ったものの時間ばかりが経過し、目指す建物を見つけることは出来なかった。探し疲れて緊張感のうすれた目に一軒の酒屋の看板が映った。「あの店で聞いてみようか」と助手席から声がした。 左に大きくカーブした道路だったので、実際は道路の右側にあったこの店が進行方向の殆ど正面 に強調されて見えたのだ。 店の前で車を止め、ドアを開けようとしてバックミラーを見た。その時、小さなバックミラーのグレーの縁取りの中に<探していたもの>を見つけた。「あった」と声を上げてしまった。未だ見ぬ ものではあったけれど、これだと言う確信があった。